比べる必要のない 世界を 彼岸という
仏さまの種まき

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考えてみれば、我々は寝ても覚めても何かと比べ損得苦楽の中にいるようです。得なことはないか、楽なことはないか、都会の良いことが目の前にあるとそれを得ようとして苦しみ、手に入るとそれが失われないかと心配し、それが奪われたら腹を立て苦しむわけです。これさえ手に入れば楽になると思っていたのに、手に入れてみても次から次へと問題が生まれてきます。こうして一生流転して一度も解決したことなく人生は過ぎ去ってしまいます。つまり、自分の起こした心理に人間自身が完全に虜にされ自由を失うのです。自分で自分の始末がつかないのですね。近代は、様々な技術革新によって人間を縛るものから開放されましたが、自分の心に自分が縛られているという人間の根本状況からは開放されていないのです。むしろ、益々自分の心に縛られていく状況は深刻になっていくでしょう。人間に根を下ろし、そこから人間を尽くし人間を高めようとするところに本来の仏の救い・人間の救いがあるのです。